赤彦とアララギ
─中原静子と太田喜志子をめぐって
福田はるか
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鮮やかな人間像—赤彦と女性たち
この一冊の根底にあるのは福田はるかという一人の小説家の感性であり、また人間学なのだ。それはここで取り上げられている歌はもとよりエッセイや日記、書簡等々の文学的資料一つ一つについての柔軟で深い読み方のなかに明瞭に現れている。
—勝又 浩(文藝評論家・法政大学名誉教授)「寄せ書き」より
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明らかになる赤彦の素顔と女性たち
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一流の歌人になるべく悶々として焦る、四十代のあまりにも人間くさい赤彦と、
澄みとおった歌境をひらいた五十代の赤彦。
その人生になやみ苦しみながら伴走した聡明な妻不二子と
畏敬と思慕で生きとおした恋人中原静子、
赤彦の門に入らず自力で成長した太田喜志子(若山)
それらの人々によりそって……(あとがきより)
目次
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プロローグ 武石村
第一章 桔梗ヶ原
柿乃村人と中原静子
教員 久保田俊彦〈柿乃村人〉
第二章 広丘村
太田喜志子(若山喜志子)
中原静子
牛 屋
・長塚節「初秋の歌」
・柿乃村人の恋
・夏 草
・堀内 卓の死
・望月 光の死
転 任
第三章 悩み
喜志子の日々
静子の日々
歌人 久保田不二子
第四章 若山牧水
牧水の恋
結婚(喜志子)
・石川啄木の死
・牧水歌集『死か芸術か』
病める静子
第五章 赤彦
筆名 島木赤彦
・長男政彦の眼病と左千夫の死
伊藤左千夫の死
原 阿佐緒の恋
・古泉千樫
・石原 純
赤彦出京
・喜志子の困窮
・赤彦の経済
第六章 八丈島
赤彦 八丈島行
長塚 節の死
第七章 菩薩位
赤彦歌集
・『切火』
・『氷魚』
・『太虚集』
赤彦の死
・静子の日々
主要参考文献 島木赤彦 略歴
寄せ書き 勝又 浩
著者略歴
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福田 はるか(ふくだ はるか)
1941年生まれ、神奈川県在住。
昭和女子大学文学部日本文学科卒。
高木健夫氏の助手として、『新聞小説史』研究の資料収集および年表作成に従事。
同人誌「じくうち」および「三田文学」に拠り作品を発表。
著書に、『田村俊子─谷中天王寺町の日々』(図書新聞社)。
主な小説作品に「風の子守歌」(文學界転載)、「棲家」(季刊 文科転載)、また評論に「小川国夫、ヨレハ記におけるメッ セージ」(三田文学)など。