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書評
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『ヒトラー暗殺計画とスパイ戦争』ジョン・H・ウォラー 著 今泉菊雄 訳
朝日新聞 平成17年(2005年)3月20日

評者・小高賢(歌人)

 700㌻近い本書の主人公は、ドイツ国防軍諜報部長官W・カナリス。彼はドイツのスパイ活動を指揮しつつ、一方でヒトラーを何とか排除したいというレジスタンス組織の中心人物でもあった。
 ヒムラーなど、ナチス内部の権謀術数が渦巻くなかで、そんなことが果たして可能だったのか。ミュンヘン会談から「バルバロサ」作戦という独ソ戦、そしてドイツの敗北までの、ほぼ10年間の彼の具体的な活動が語られてゆく。
 ヒトラーでないドイツを造るために、一方で、情報を英仏側に流す。第2次世界大戦は、スパイ戦争だったといわれるが、ここまで複雑だったのかと感嘆する。異常に猜疑心の強いスターリンのほか、ヒトラー、ゲーリング、リッベントロップ、チャーチル、ルーズベルト、ウィンザー公、フランコ、ダレスほか、登場人物にも事欠かない。
 迷路のように入り組んだ情報戦を生き抜いた人生。事実のすさまじさに圧倒された。

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