文藝・学術出版鳥影社

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書評
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『ヨーゼフ・ロート小説集2』ヨーゼフ・ロート 著 平田達治 佐藤康彦 訳
毎日新聞 平成11年(1999年)12月5日

評者・富山太住夫

 話としては、この東欧ユダヤ人の一家がアメリカに移住するまでを書いたもの――息子の一人は祖国で兵隊となり、もう一人はアメリカに密出国し、娘はコサック兵と関係をもち、もう一人の息子は障害児(のち指揮者となる)、そして妻。作りようによっては波瀾万丈の歴史ロマンともなりかねないものを、あるいはそこまでもってゆかなくても、十分すぎるほどに起伏に富んだ物語を、ロートはいかにも平凡なことのように語ってゆく。なにかしら、とてつもない悲劇を前にしながら、その悲劇に興奮することをたしなめられているような気がしてくる。

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