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『マンガ松坂屋物語』森哲郎 著
名古屋新聞 おはよう名古屋 平成18年(2006年)11月23日

呉服店からデパートへ─変貌の軌跡 漫画で「松坂屋物語」
46冊目は生まれ育った名古屋にちなみ 50周年の画業記念 森哲郎さん(78歳)
パーティーで100人が出版祝福

 名古屋市守山区にアトリエを構える漫画家、森哲郎さん(78)が、漫画家50周年を記念し「マンガ松坂屋物語 江戸時代から四百年―」を出版した。社会的なテーマを多く手がけ、名古屋を題材にした作品が少ないと思い、「生まれ育った名古屋にちなんだものを」と老舗百貨店・松坂屋の歴史を取り上げることにした。今回で46冊目の出版。22日には市内でパーティーが開かれ、約100人が森さんを祝福した。(樋岡徹也)
 「松坂屋物語」は、慶長16(1611)年に創業した「いとう呉服店」が、安政の大地震や関東大震災、太平洋戦争を乗り越えて百貨店・松坂屋へと生まれ変わる軌跡を、ユーモラスなイラストや写真を交えて描いている。
 名古屋市昭和区で生まれた森さんは、幼少のころから休日のたびに中区の松坂屋まで遊びに出かけた。「エレベーターガールや案内嬢が登場したり、ファッションショーが開かれたり。松坂屋がたどった400年近くの歴史は、日本近代史の縮図」と説明する。
 松坂屋から借りた膨大な資料を読み解き、7月から3カ月かけて執筆。物語には、名古屋のメーンストリート・広小路通に百貨店を建てようと考えた松坂屋の初代社長・伊藤祐民氏が、父・祐昌氏や古参社員らに猛反対されながらも、「時代の進歩に遅れを取ってはならない」との強い信念で押し切った場面も。1910年、名古屋で初めての百貨店が誕生したこの出来事を、「呉服店からデパートへと変貌を遂げる、何ともドラマチックな瞬間」と話す。
 60年代、漫画週刊誌に「サラリーマン太閤記」などを連載。故手塚治虫氏らと長編漫画研究会も結成した。だが、「もうかるナンセンス漫画ではなく、自分が描きたいものを描く」と70年代に入ってからは作風を社会派に転向。「秩父事件」「日本国憲法・五部作」などの作品を描いてきた。名古屋に関しては、堀川の歴史や浄化運動などを紹介した「堀川まんが図鑑」も出版している。
 この日のパーティーには森さんと親交のある地元各界の代表ら約100人が出席。森さんが「50年の節目に子供のころから親しんだ松坂屋の歴史を描くことにした。11年に創業400年を迎える松坂屋の店頭に並んでいるくらいのロングセラーにしたい」とあいさつした後、出席者全員で乾杯して祝福した。

『マンガ松坂屋物語』森哲郎 著
中日新聞 平成18年(2006年)11月

漫画家の森さん 50周年を祝う会

 本紙5面で連載中の「堀川まんがスケッチ」の作者で名古屋市出身の漫画家森哲郎さん(78)の「画業50周年記念・森哲郎君の出版を祝う会」が22日夜、名古屋市中区栄三に名古屋クレストンホテルで盛大に開催された。
 森さんは戦後、漫画を独学、1960年に名古屋タイムズ社嘱託などを経て上京。コミック漫画に連載した「サラリーマン太閤記」が映画化されるなど話題に。75年に社会派に転じ「劇画・日本国憲法」などを出版。その後も制作意欲は衰えを知らず「論語漫画」「マンガ孫子の兵法」などに続いて、このほど「マンガ松坂屋物語」を発刊。名古屋開府とともに歴史を刻んだ松坂屋400年の歴史をまとめたビジュアルドキュメントで「孫子の兵法とともに漫画家人生の集大成のつもりで描いた」(森さん)力作。
 祝う会には関係者約100人が出席。近藤昭一衆院議員があいさつ。岡本善博名古屋市議会議長が祝辞。最後に森さんが謝辞を述べて乾杯。アトラクションではフラダンスショーやかつての「中日映画ニュース」からの森さんの活動記録を上映、森さんが即席漫画を披露すると拍手が起こった。出席者らは森さんの偉業を祝いながら歓談。森さんは「記念の会は今回が11回目。堀川は僕が生きているうちにきれいいなってほしいね」などと話していた。

『マンガ松坂屋物語』森哲郎 著
朝日新聞 平成18年(2006年)11月22日

78歳、マンガ新刊 森哲郎さん、46冊目 松坂屋の歴史題材「描くのが健康法」

 名古屋市守山区の漫画家、森哲郎さん(78)が46冊目となる作品「マンガ松坂屋物語 江戸時代から四百年」を出版した。政治漫画など社会的な作品を中心に描いてきたが、長い漫画人生を振り替える中で、故郷名古屋の題材を選んだ。22日に漫画家半世紀を祝うパーティーを名古屋で開く。
 森さんは、60年代、漫画週刊誌に「サラリーマン太閤記」などを連載。一時は月に15本を描く売れっ子だった。70年代に入って、作風をギャグから社会派に転向。日本国憲法やロッキード事件、日中戦争などをテーマにした作品を出してきた。朝日新聞にも政治漫画を描いた。
 「松坂屋物語」は1611年に創業された「いとう呉服店」が火災による焼失や関東大震災、戦災など多くの困難をくぐり抜けてデパート松坂屋に成長した歴史を、ユーモアを交えて描いている。
 森さん自身、名古屋で過ごした少年時代、放課後や休日になると松坂屋に出かけた。「足を踏み入れると、照明がパーッと輝いていて、甘酸っぱい香りが漂っていた。今で言う遊園地のよう。思い出の場所です」
 160ページほどの原画を3ヶ月で描き上げ、10月末に出版した。11月初めには松坂屋本店にある書店でサイン会と原画展も開いた。
 1954年に漫画家の道を歩み始めて半世紀。今でも創作意欲は旺盛だ。今年はすでに中国の「孫子の兵法」を解説した漫画も出版した。
 守山区にある仕事場の壁には、アイデアの元となる新聞記事の切り抜きなどが張られている。
 「毎日漫画を描くことが健康法」という森さんは、次作も子ども時代の戦争体験など名古屋を題材にしたいという。

『マンガ松坂屋物語』森哲郎 著
中日新聞 平成18年(2006年)11月22日

漫画で迫る松坂屋物語 呉服店の進化「面白い」 社会派・森さん 50周年記念で出版

 守山区にアトリエを構える社会派漫画家、森哲郎さん(78)が、漫画家生活50周年を記念した「マンガ 松坂屋物語―江戸時代から四百年」を出版した。「松坂屋がたどった道は、日本近代化の一こま。百貨店がたどった激動の歴史の中には学ぶべき教訓がいっぱいある」と、46冊目となった著作の出来栄えに満足そう。22日に市内のホテルで出版を祝う会が開かれる。
 著作に「秩父事件」や「日本国憲法・5部作」など社会的テーマを多く持つ森さんだが、名古屋をテーマにしたものは案外少なく、「もう一冊、名古屋にちなんだものを」と、名古屋を代表する百貨店である松坂屋の歴史に目をつけた。
 松坂屋の協力の下、歴史を解きほぐし、執筆は7月から9月までの3ヶ月間で集中的にこなした。大好きなウィスキーをちびりちびりとやりながら、1日3-5ページを書き進めた。完成した時は「足ががくがくして立てなかった」ほど、松坂屋の歴史に夢中になってしまったという。
 お薦めのくだりは、松坂屋の前身である「いとう呉服店」がデパートへ変化を遂げるシーン。松坂屋の初代社長となった伊藤祐民氏が、父・祐昌らに大反対される場面は「これだけで一冊の本ができるくらい面白い」とのめり込んだ。
 番外編として面白エピソードも紹介。1966年5月に、銀座店で開かれた「生きた動物大バーゲン」ではインドゾウの子ゾウが120万円で売られ1万匹の生き物が展示即売されたことや、マネキン代わりにモデルの女性が和服や洋服をまとって客に立つ「マネキンガール」の登用をいち早く実施したことなど、楽しい話題も盛り込んだ。
 「松坂屋の歴史はまだ続いている。これはまだ未完。ぜひ続編を描きたい」と森さん。漫画家生活50周年の節目に出会った新テーマに意気込んでいる。

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