詩集評
夜露死苦されない現代詩の墓場 辻元よしふみ
(前略)そう思っていると、いい作品を見つけた。佐藤すぎ子『7月に降る雨』(鳥影社)の「地下洪水」という一篇。
音楽で言うならドライブ感がある、というのか。」よく安易にも「リズムがある詩」の一言で評価したり貶したりする人が見られるが、リズムがあればいいというものではなかろうし、しかし詩というものはリズムに乏しい限りは、詩という資格を失っている、とは私も持論としてある。この詩などはひとつひとつ持ち出す素材は何かを言い当てているかいないのか定かならず、むしろ思わせぶりなあれこれを持ち出しているとも言えるが、それが実に重大なことを暗示しているように感じられるのは、そのように読めるのは、一種の芸である。詩の魅力というのはそういうものであって、詩の魔力というか、詩の詩たるゆえん巧みな政界のアジテーターなども実はこのような能力を潜在的に持っていたのである。ワンフレーズを繰り返すだけ、といって貶す人も多かったが、効果的なワンフレースはリフレインで使用するべきこと、というのは詩の世界のセオリーである。いい詩、いい歌詞は繰り返しが巧みである。この作品は、最後に冒頭の「雨がきそうだ……水のこと」をもう一度引用して終わる。ドラマチックな構成の詩は言葉の指示内容そのものよりも構成でもって読ませるという、ひとつの典型と思う。
(後略)