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芥川賞作家・柴田翔の歩み —30年ぶりに新作長編『地蔵千年、花百年』を発表

されどわれらが日々―

柴田翔は1935(昭和10)年東京府南足立郡栗原町(現在の東京都足立区栗原)生まれの小説家、ドイツ文学者です。
幼少期に板橋区常盤台に転居し、そこで育ちました。当時の常盤台は都会と田舎の境界のような場所で柴田家も町工場と農家が混在する分譲住宅地にありました。
少年期には戦争、それに伴う集団疎開、縁故疎開、敗戦を経験。
戦後は六三制の新制中学の第一期生として上板橋一中へ進学。その後武蔵中へ転校し、武蔵高を経て、1953(昭和28)年、東京大学教養学部理科一類に入学します。翌々年には工学部応用化学科に進学しますが、文学部独文科へ転科しています。
その後は小説家として「されど われらが日々―」で芥川賞を受賞。
ドイツ文学者としては日本ゲーテ協会ゲーテ賞を受賞し、西ドイツへ留学。
東大教授、文学部長を歴任するなど輝かしい経歴を誇ります。
そんな柴田翔が約30年ぶりに新作長編小説「地蔵千年、花百年」を発表しました。
小説家として、ドイツ文学者として二つの顔を持つ柴田翔のこれまでの歩みを振り返ります。

小説家としての柴田翔

小説を初めて書いたのは東大工学部時代の20歳の頃です。翌年に文学部独文科へ転科しています。
1958(昭和33)年、大学院へ進学した23歳の時に「ロクタル管の話」を書きます。同時期、友人たちと文学研究会を開くなど文学の世界へのめり込んでいきます。この頃には既に「されど われらが日々―」に着手しています。
1959(昭和34)年、文学研究会の仲間たちと同人雑誌「象」を創刊。創刊号にエッセイ「文学批評のための予備的断片的考察」を発表しています。翌年、『象』に少年の視点でラジオ部品と部品の露天街を描いた「ロクタル管の話」を発表します。その後、同作が『文學界』十月号に「同人雑誌優秀作」として転載され、芥川賞候補となりますが、この時は落選しています。
1963(昭和38)年、同人誌『象』に六全協前後の学生たちの青春、葛藤を題材として描いた「されど われらが日々―」を発表。翌年、同作が再び芥川賞候補となり、同年上半期の第51回芥川賞を見事受賞しました。選考委員の石川達三 は芥川賞候補としては長すぎるとしながらも「他の候補作品にくらべて力量は抜群であると思われる」「読み終って心の中に一種の香気が残る」「或る一時代の左翼学生たちの、厳しさと絶望感、苦悩と愛慾のすがたが彷彿としていて、この長い作品を飽くことなく読んだ」とし、高見順は「近来出色の作品」と賞賛しています。『されど われらが日々―』は前出の「ロクタル管の話」も収録した単行本として刊行され、186万部を超える空前の大ベストセラーとなっています。
その後も1966年(昭和41)年に青春時代を描いた「贈る言葉」と「十年の後」を収録した『贈る言葉』、1971(昭和46)年に短編集『鳥の影』、さらに同年には「されど われらが日々―」の続編とも言える『立ち盡す明日』を発表。
その他にも数多くのエッセイや絵本、書評を発表するなど非凡な才能を見せています。

ドイツ文学者として柴田翔

東大大学院独文科修士課程を修了後、同大で助手となります。
1960(昭和35)年、ツヴァイクの「バルザック」を翻訳。翌年『ツヴァイク全集5』に「バルザック」の翻訳と「三人の巨匠」の解説が収録されています。
1961(昭和36)年、論文「『親和力』研究―西欧近代の人間像の追求とその崩壊の認識―」で日本ゲーテ協会のゲーテ賞を受賞。これにより翌年に助手を休職して西ドイツへ留学します。南ドイツのシュタウフェンに2ヵ月滞在し、その後フランクフルトで2年間を過ごします。
1965(昭和40)年、再びドイツへ渡り、ベルリンに滞在。翌年に東京都立大学文学部講師、さらに翌年には助教授となり、論文「ロッテ小論」、「歴史の転回と文学的営為─『エミーリア・ガロッティ』」、「内面世界に映る歴史─『タウリスのイフィゲーニエ』試論」、「ノーヴァリス『夜の讃歌』覚書」を発表。『世界文学全集3』にゲーテ「親和力」を訳出。『文学のすすめ』に論文「研究と感動」が収録されています。
1969(昭和44)年に母校の東京大学へ戻り、文学部助教授、教授、文学部長を歴任。1995(平成7)年定年退官し、名誉教授となります、その後も共立女子大学で教授を勤め、2004(平成16)年に定年退任。
主な書籍として1985(昭和60)年に『ゲーテ「ファウストを読む」』、1986(昭和61)年に『内面世界に映る歴史―ゲーテ時代ドイツ文学史論』を発表しています。翻訳書としてもゲーテ『ファウスト』『親和力』『若きヴェルテルの悩み』のほか、カフカ、トーマス・マン、ホーフマンスタール、ツヴァイクらの訳出や評論、解説を多数発表しています。

30年ぶりの新作長編小説を発表

そんな柴田翔が30年ぶりに新作を発表しました。鳥影社刊行の文芸誌「季刊文科」の69号に掲載された「地蔵千年、花百年」です。本作は柴田翔の集大成ともいえる作品で、国内外を舞台に一人の男性の激動の人生を描いています。読売新聞をはじめ、数多くのマスメディアでも紙面を大きく割いて取り上げられるなど多くの賞賛を受けました。掲載された「季刊文科」69号は早々に完売し、後日発売された70号には読者の感想が掲載されるなど大きな反響を呼んでいます。

『地蔵千年、花百年』の単行本の発売が決定

『地蔵千年、花百年』の単行本化が決定しました。
掲載誌「季刊文科」69号に対して数多くのお問い合わせをいただきましたが、想像を超える反響により早々に完売してしまいご迷惑をおかけしました。お詫び申し上げます。
発売は2017年4月。価格は1800円(税別)となります。
鳥影社ではメールフォームより予約、注文を承っております。送料無料です。
『地蔵千年、花百年』
『地蔵千年、花百年』
https://www.choeisha.com/pub/books/56063.html

著者 柴田 翔

柴田翔30年ぶりの新作長編小説。
国内外を舞台に一人の男の数奇な運命、激動の人生を描く。
半世紀の時空を描く長編570枚。
付録として世田谷文学館ニュースに掲載された柴田翔氏×菅野昭正氏(世田谷文学館館長)の対談小冊子付。