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読まないともったいない? ドイツ文学の個性のある作品たち

読まないともったいない? ドイツ文学の個性のある作品たち
みなさんはドイツ文学と聞くと何を思い浮かべますか?
トーマス・マンやリルケ、フランツ・カフカやヘルマン・ヘッセ、古いところではゲーテなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?

作品では作者不明の「ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を知っている方も多いでしょう。リヒャルト・シュトラウスによる交響詩にしたことで有名ですね。

ドイツで世俗文学が多く作られるようになったのは中世750年頃。
フランスやイタリアの影響を受け変化していきます。
ここではそんなドイツの文学、特に現代文学について紹介致します。

ドイツ文学が翻訳されるのは少ない?

グリム童話やゲーテなどの古典が有名で翻訳されたものは数多くありますが、現代文学は英米文学に押されがちな現代ドイツ文学。

しかし、そんな状況であるからこそ、翻訳されたものは選りすぐられた名作ばかりです。
どのような作品が翻訳されているのでしょうか?

フランツ・カフカ『城』

カフカの名前を聞いたことある方も多いでしょう。

最近ではフランツ・カフカを知らなくても「カフカ」という響きに聞き覚えがあるのではないでしょうか?
恐らくそれは村上春樹の『海辺のカフカ』だと思われます。

海辺のカフカでは、村上春樹はカフカの思想のもと作品を書いたと言われています。
さてその海辺のカフカのきっかけとも言える、フランツ・カフカの作品『城』では、仕事の依頼を受けていながらも城の中に入ることができない測量士Kを取り巻く世界が描かれています。

この作品は、人間の目に見えない世界「不条理」が描かれていることや、未完の作品であることも興味惹かれます。

ヘルマン・ヘッセ『車輪の下で』

ヘルマン・ヘッセは20世紀前半に詩と小説で活躍した文学家です。
作家の他にも絵の才能があり、彼の詩集には自身の描いた風景や蝶などの水墨画が添えられています。

『車輪の下で』では、勉強が良くできる主人公が、大人になる過程で友情や恋愛、仕事などことあるごとにつまづいてしまう、現代社会さながらの世知辛い世界が描かれています。
不安や悩みを多く抱える人から共感を得ている作品です。

穏やかな生き方を描いた作品が多いヘッセには、すこし珍しい作品です。

クリストフ・メッケル『山羊の角』

メッケルは1935年のベルリンに生まれ、小さい頃に第二次世界大戦を経験しました。
戦争を肌で感じたメッケルは、後に『戦争』という小説や、シュールレアリスム的な詩集『夢遊病者のホテル』などの作品を執筆しています。

また、大学で2年間グラフィックの勉強をすると、卒業後は作家とグラフィックデザイナー、版画家としても活動をするなど、美術センスに優れた一面も発揮しています。

さらに、詩で有名なリルケやトラークルの名のついた賞を受賞したり、ブラックユーモアの作品を評価する賞を受賞するなど作品の幅が広いのが特徴です。

『山羊の角』
クリストフ・メッケル(著)
相田 かずき(訳)
www.choeisha.com/pub/books/55196.html

現代のドイツ文学は翻訳されているものが少ないですが、手に取ればどれも興味深く、心に深く刻まれることでしょう。
「外国の書籍を読みたいけど何を手に取っていいか分からない」という方や、英米の著名な本を読み終え「今度はもっと別の景色も見てみたい」と思う方にも、現代ドイツ文学がオススメですよ。