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小説を構成する二大要素「世界観」と「世界設定」の違いを知ろう

小説を構成する二大要素「世界観」と「世界設定」の違いを知ろう
作家を志望する方々の多くは基本を見失った経験を持っているはずです。
人に望まれる作品、好まれる小説を作り上げるために「基本」は忘れてはいけない重要な基盤ですから、根源的な要素を柱として日ごろから再確認することをおすすめします。

柱とするべき「根源的な要素」の一種として「世界観」と「世界設定」がありますが、それぞれどのように違うのか、皆さんは明確な言葉で説明できるでしょうか?

小説の世界を方向付ける「世界観」

まず考えなければならないのが、着想の原点となる「世界観」です。
世の中に存在しない「非現実」の世界をイメージ付け、詳細な「世界設定」を組み上げる基本方針となる要素でもあります。
全ての土台がここにあると言っていいでしょう。

想像してみて下さい。

人は誰もが「自分の立場から」世界を見ています。
あなたの描く小説の中で、世界を見ているのは誰なのでしょうか。
そこに生きる人々はどんな風に生き、どんな物を食べ、何に喜び、何に絶望し、悲しむのでしょうか。

世界は見る人によってその姿を180度変えてしまいます。
同じ位置に立ったとしても内に秘めた感情が異なれば違うものが見えるはず。

また、「見る」主体は個人であるとは限りません。
「世界観」とは、世の中を見渡す切り口に他ならないのです。
宗教、団体、概念など、切り口の可能性は無限の広がりを持ちます。

小説の世界を実在するかのように感じさせる「世界設定」

小説の世界を実在するかのように感じさせる「世界設定」
非存在を実在するかのように感じさせるには、現実と同じように「条件付け」が必要となります。

例えば、ドラゴンなどの架空の生き物が存在する「世界観」の中の「世界設定」であれば、「ドラゴンは火を噴く危険な生き物だが個体数が少ないため遭遇率は高くない」
「ドラゴンの封印を解くには伝説の魔剣が必要である」といったものが「条件」として一般的なのではないでしょうか。

これは架空の世界に散逸する要素をつなぎ留める横糸の役割を果たします。

ストーリーを載せていく基盤として

取りとめのない無数の要素の塊が「世界観」であるとすれば、必要な要素を限定し、条件付ける「世界設定」は横糸となって要素を秩序立てます。
その二つの要素が確立して初めて、想定したストーリーが動き出す「地面」が現れるのです。

イメージだけ、あるいは、条件だけではストーリーを肉付けし、リアル感を持って「魅せる」レベルには到達できません。

もしも世界観の段階で迷うようでしたら、描きたい人物像から入っていくという方法もあります。
今回ご紹介した二大要素から小説を構想できなかったとしてもあきらめずに、いろんな糸口から考えることをおすすめします。