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再ブーム!? プロレタリア文学って何?

小林多喜二の『蟹工船』はプロレタリア文学の傑作といわれ、
今再ブームが起こっています。

安い給料で過酷な労働をする「蟹工船」の貧しい労働者と定職につけない現在のフリーターがの状況が似ているとされ、若者を中心に再び読まれています。

今改めて注目されている、プロレタリア文学につ いて
ご紹介します。

昭和の初めに流行

「プロレタリア」というのは、もともと賃金労働者のこと。

プロレタリア文学は会社の経営者に、安い給料で悪い条件で働かされて苦しい生活を送っている労働者のことをテーマにした文学です。
昭和の初めに流行しました。

「フランス帰りの小牧近江・金子洋文が、雑誌『種蒔く人』を創刊


日本では昭和のはじめ、1920-30年代に盛り上がりをみせました。
1921年にフランスから帰国した小牧近江・金子洋文が、雑誌『種蒔く人』を創刊しました。
そこから第二次世界大戦までの十年あまりにプロレタリア文学活動は盛り上がっていました。

雑誌『文芸戦線』が、新しいプロレタリア文学の中心に




プロレタリア文学の幕開けとなった『種蒔く人』は弾圧を受け
1923年の関東大震災後の社会主義者弾圧で休刊に。

その後1924年、雑誌『文芸戦線』が創刊され、新しいプロレタリア文学の中心的な雑誌となりました。

社会民主主義系の「文戦」と,共産主義系の「戦旗」の二潮流へ

雑誌『文芸戦線』の作家を中心に日本プロレタリア文芸連盟が結成され、作品がかかれました。

無政府主義・非マルクス主義者など、組織が次第に分裂していきます。

同人誌もたくさん出ます。
このあたりのプロレタリア文学は、おおまかに社会民主主義系の「文戦」と,共産主義系の「戦旗」二つに分けられます。

小林多喜二は、「戦旗」(共産主義系)

小林多喜二は、「戦旗」(共産主義系)です。
ほかの代表作家では、葉山嘉樹が「文戦」(社会民主主義系)で、徳永直が「戦旗」(共産主義系)派です。

再ブーム!『蟹工船』

小林の『蟹工船』はプロレタリア文学の傑作といわれ、
今も再ブームが起こっています。

貧しい、最悪の環境だからこそ、人間の本質が現れます。
人の性を描ききった作品は、今でも色あせていません。

その他代表的な作家としては、葉山嘉樹で情緒豊かで芸術性にも
優れているといわれています。
徳永直は国際的にも評価されています。

小林多喜二は、地下活動で逮捕され殺されました。
プロレタリア文学は実際には労働階級ではない、資本階級の高学歴の人々によっても担われてきました。

そうした人たちは労働階級の人の現実をみつめていなかったといわれ、あっけなく戦争に向かう国の弾圧に敗れ去り、
プロレタリア文学は終焉していきます。

格差社会と言われ格差が再び広がる今の日本にも通じる、プロレタリア文学。
さらにご興味のある方は下記の本をおすすめします。

昭和文学の傷痕 坂本満津夫
www.choeisha.com/pub/books/54731.html
「人民文庫」「プロレタリア文学」「文藝戦線」文芸同人誌を中心に、治安維持法による弾圧に苦しんだ作家たちの足跡とその時代を検証します。
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